gacco:「人間脳科学入門」を受講しました。
講座内容
人間の心や行動には様々な不思議があります。
それを実現する多様な脳内情報処理を、認知プロセスとして理解するのが認知神経科学です。この分野では、脳内の認知プロセスを可視化する脳機能イメージング技術によって、私たちの精神・行動を実現する脳の仕組みを明らかにしています。
人間脳科学は、そのなかでも特に、「人間らしさ」を特徴づける心や行動の謎について、様々な基礎的・応用的な研究を進めています。
本講座では、その基本知識から最新の知見まで幅広くご紹介し、人間脳科学の可能性を感じていただくことを目的としています。
Week1:心が生まれる現場とその可視化
心は脳でどのように生まれるのでしょう。脳は多様な感覚入力を統合し、記憶を参照して環境や物事の情報選択や価値評価をおこない、行動に反映させます。これら多様な情報処理、すなわち心の部品である認知プロセスを可視化する脳機能イメージング技術が、今日の認知神経科学を可能にしました。
第1週は、心が生まれる現場とその様子を可視化する技術について、基礎的な理解を目指します。
1.脳機能マッピングの基礎
2.一次感覚野
3.感覚連合野
4.運動野
5.運動制御
6.注意
7.記憶
8.感情(1)顕著性・行動的意義検出及びネガティブ感情
9.感情(2)ポジティブ感情・報酬価値表象・行動意思決定
Week2:人間らしさを生み出す脳
人間らしさの特徴として、高度な認知処理と社会性が挙げられます。我々は言葉を理解し、操り、環境から多様な意味をくみ取ります。他者と心を通わせ、その見えない心を理解し、コミュニケーションを通じて複雑な社会を作り上げています。その中で、様々な物事を抽象概念として操り、高度な思考と創造性を実現しています。
第2週は、人が社会を生きるために発達させた複雑な心と脳のメカニズムに迫ります。
1.言語処理に関与する脳領域
2.ミラーニューロンと身体化された認知
3.「意味」の神経基盤
4.社会性(1)共感と共調
5.社会性(2)心の理論
6.社会性(3)言語コミュニケーション
7.作業記憶
8.様々な思考
9.機能領野内機能分化:VLPFCを例に
Week3:自己を創る脳
人間は、その高度な認知処理と社会性から、ほかの人とは違う「自分」についての意識を生み出しました。「自分」とは、この身体や、運動や思考の主体であり、他者の目に映る存在でもあり、この社会で何らかの価値や役割を持つ存在でもあります。この「自己」は我々の人間らしさの核心であるとともに、様々な実存的・社会的問題を生み出します。
第3週は、自己を創りだす心と脳の不思議に迫ります。
1.自己認知
2.身体的自己意識
3.身体的自己と順モデル予測
4.他者の目に映る自己
5.自己の社会的価値・役割
6.自己3層モデル
7.順モデル予測と自己主体感
8.相互パートナー選択
9.自己顔に対する感情反応
Week4:未来を拓く人間脳科学
人間らしい精神・行動を実現する脳の仕組みを明らかにする人間脳科学。その成果は、どのように我々の未来を変えてゆくのでしょうか。我々の日常生活の安全と心身の健康、ビジネス、様々な社会的課題を解決する制度や教育など、人の心と行動が問われるすべての分野で、人間脳科学の応用が始まっています。
第4週は、未来を切り開く人間脳科学の可能性について、様々な分野の研究をご紹介します。
1.安全運転の神経基盤
2.fMRIによる熟練航空管制官の脳機能の特徴付け
3.災害を生きる力と自己超越
4.想定外事象に対処できる人はどんな思考をしているか
5.ビジネスと人間脳科学
6.ポジティブ思考の想像学習による社交不安低減法の神経基盤の解明
7.懐かしさの神経基盤
8.批判的思考態度は訓練により誘発できるのか
9.外国語教育への応用
講師・スタッフ紹介
杉浦 元亮(すぎうら もとあき)
東北大学加齢医学研究所 人間脳科学研究分野 教授/東北大学災害科学国際研究所 認知科学研究分野 教授(クロスアポイントメント)
1971年7月生まれ。神奈川県育ち。
東北大学医学部卒業後、同大学院博士課程を経て東北大学助手。ユーリヒ研究センター(ドイツ)研究員、宮城教育大学助教授、生理学研究所准教授を経て、現職。
学位:博士(医学)東北大学
専門は人間脳科学で、人間らしい心と行動を実現する脳の仕組みについて研究を進めている。
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